Webアクセシビリティ対応は「思いやり」ではなく「品質」の問題だ

「うちのターゲットに障害者はいないから」という誤解
Webアクセシビリティの話をすると、いまだに「うちは健常者向けのサービスだから関係ない」という反応が返ってくることがある。これは大きな誤解だ。アクセシビリティは、視覚や聴覚に障害がある人だけのものではない。老眼で小さな文字が見えづらくなった高齢者、骨折してマウスが使えない人、屋外の強い日差しでスマホの画面が見えない人——つまり、あらゆる状況に置かれた「すべての人」のためのものだ。
アクセシビリティは「特別な対応」ではない
多くの人が、アクセシビリティ対応を「追加のオプション作業」だと捉えている。しかし本来、HTMLの仕様通りに正しくマークアップし、適切なコントラストを保ち、キーボードだけでも操作できるように作るのは、Webサイトとしての「当たり前の品質」だ。特別なことをするのではなく、基本に忠実に作る。それだけで、アクセシビリティの8割は担保できる。
明日からできる3つの基本アクション
1. 画像に適切な代替テキスト(alt)を入れる
最も簡単で、最も効果的な対応だ。画像が表示されない環境や、音声読み上げソフトを使っているユーザーにとって、alt属性は命綱になる。「装飾目的の画像は空(alt="")にする」「意味のある画像は内容を簡潔に説明する」。このルールを運用担当者全員で徹底するだけでいい。
2. コントラスト比を見直す
おしゃれさを優先するあまり、薄いグレーの背景に少し濃いグレーの文字を重ねていないだろうか。これは視認性が極めて悪い。WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)が定めるコントラスト比の基準(通常テキストで4.5:1)を満たしているか、チェックツールを使って確認してみてほしい。
3. マウスを使わずに操作してみる
一度、マウスやトラックパッドから手を離し、キーボードのTabキーとEnterキーだけで自社のサイトを操作してみてほしい。メニューは開けるか。フォームは送信できるか。現在どこにフォーカスが当たっているか視覚的にわかるか。このテストをやるだけで、自社サイトの課題が痛いほど見えてくるはずだ。
法対応を言い訳に、品質を底上げする
2024年4月の障害者差別解消法改正により、事業者による合理的配慮の提供が義務化された。これを「面倒な法対応」と捉えるか、「サイトの品質を底上げするチャンス」と捉えるかで、数年後のブランド価値は大きく変わる。まずは自社サイトの現状を知ることから始めてみてほしい。